ザ・怪奇ブログ

怪奇小説・絵画・怪奇の世界!

2019-09-26から1日間の記事一覧

虹色の丘 21(最終話)

小さなライトの明かりを頼りに、私たちは暗い洞内をあてもなく走る。後ろを振り返る余裕も、立ち止まる余裕も私たちにはなかったが、言葉を交わす事は出来た。 「…チコあなたの家って、何やってるとこなの!?」 隣を走る智佳子に私は尋ねる。彼女は見事に鉄…

虹色の丘 20

狭い洞窟の通路を抜けたところに、木で造られた古めかしい柵があった。私は柵の所まで行くとその先の闇を覗きこむ。これまでよりもさらに暗い暗黒がそこにあった。ライトを当ててもその先が見えないのは、そこが大きなホールのような洞窟になっているからだ…

虹色の丘 19

入口付近の狭く真っ暗な穴を進む私たちだったが、ほどなくして広く作りもしっかりとした坑道へと出た。 岩盤を削り、きちんと整えられたその坑道内は水が滴り、私たちのライトに反射してキラキラと光る。もう何十年も人の手を離れた洞内は、あちこちに植物や…

虹色の丘 18

暗い闇の中を走るワゴンの中で、私たちは急ぎお互いの情報を整理した。取り急ぎ優先することは、消えた智佳子を見つける事であったが、それについて裕は炭鉱跡に向かったのではないか?と。それには私も賛成した。なぜか分からないが、そんな確信があったの…

虹色の丘 17

メガネの母親は、私たちがやってきた時ちょうど夕食を済ませたところだった。こんな時間に私たちが現れた事に驚いていたが、快く中に通してくれた。しばらく前に見た時よりは、メガネの母親は元気そうに見える…。久しぶりの来客に、少しだけ嬉しそうにお茶の…

虹色の丘 16

この間は行かなかった小高い丘のふもとにワゴンをとめて、私たちは歩いて上まで登った。丘は背丈の長い草が生い茂り、歩き難かったが夜空の星が明るいのでなんとか丘の頂上までやってきた。春の夜風が心地よく私たちの顔を撫でていき、草のさらさらという音…

虹色の丘 15

夕食もかたずけ終わり、私はインスタントのコーヒーを飲むためお湯を沸かしていた。なにはともあれコーヒーでも一杯飲みたい気分だった。 お盆にのせ部屋に戻ると、各自バラバラにくつろいでいる。と、いっても本当にくつろいでいる者は一人もなく、それぞれ…

虹色の丘 14

私と裕がペンションに戻るとすでに日は落ちかけていた。町からかなり外れた山の、スロープの中腹にそのペンションはあった。もちろん泊り客は私たちだけで、お客が来るなんてずいぶん久しぶりの事だ、と宿主は言った。 部屋に戻ると和美と智佳子が夕食の支度…

虹色の丘 13

町まであと少しの峠にある食堂に停車した私たちは、先に到着していた大樹と合流した。彼はクリーニング店のワゴン車でやってきていたが、病院に入院していたと聞いていた智佳子が私たちと一緒なのを見て驚いた。私が大樹にこれまでの出来事を説明している間…

虹色の丘 12

山間の自動車道を智佳子も加え、かつての炭鉱町に向けて走る。見通しの良い道はほとんどすれ違う車もなく、快適なドライブだった。 それもそのはず、炭鉱が閉鎖されるとすぐに住民達は比較的大きな隣町や市内の方にどんどん移り住んでいったのだから、今も町…