ザ・怪奇ブログ

怪奇小説・絵画・怪奇の世界!

マテリアル2

マテリアル2 最終話

27 デッドリーオルゴン その部屋は不気味な物で溢れていたが、中でも奇妙な物が本棚の裏側に隠してあった。それは小さな部屋になっていて、さながら実験室のようである。 見た事も無いような実験器具やらが所狭しと棚に並び、何か得体の知れない不気味な液…

マテリアル2 26話

26 秘密 部屋を出た真理は長い廊下を移動しながら、自分がずいぶん子供じみていたいた事に後悔した。二度までも一人置いてけぼりをくらったと感じた真理は、光が崖から飛び降りた事にひどく腹を立て、大学へと帰って来てしまった。 どうして傍にいてあげら…

マテリアル2 25話

25 奇妙な嘘 救護用の輸送機が慌ただしく双子岳へとやってきた頃、日の出までにはもう少し時間があった。 この双子岳へやって来た陸軍の秘密部隊の精鋭は、到着後休む間もなく作業を続けた。まずは安全の確保、そして深い崖下への捜索…これはきわめて危険…

マテリアル2 24話

24 微笑みの向こう側 目の中心部にある瞳孔というものは普通、周囲が明るい時に小さくなり、暗くなると大きくなるものである。瞳孔の性質、形状は動物種により異なっていて、人などは円形の瞳孔を持っている。 かたや猫や蛇などは、垂直のスリット型の瞳孔…

マテリアル2 23話

23 驚異のオルゴンパワー 光にとっての時間とはとても重要なものであった。人は何かをする時、している時、流れている時間は誰にとっても一緒の普遍なものである。 しかし同じ時間でも、人によってはその流れ方に遅い早いの違いがある。僅かな時間でたくさ…

マテリアル2 22話

22 銃弾 深い森の中に建つ、聖パウロ芸術大学の校舎に激しい雨が吹きつけている。深夜の二時を過ぎ、誰も動く者のいないはずの校舎を歩く一つの影があった。ラガーシャツを着た若い刑事である。 彼は暗い廊下を足早に地下への階段を降りて行き、昨夜亡くな…

マテリアル2 21話

21 悲しい瞳と託したもの… 五分と経たない内に目を覚ましてしまう真理は、深いため息を一つ吐き出すとソファーから立ち上がった。手首の時計を見ると、まだ深夜の二時半を過ぎたばかりで、朝まではまだまだ時間がある。 傍のソファーには光さんが眠ってい…

マテリアル2 20話

20 双子岳ロッジ 急な坂道のスロープを上がりきった真っ暗な山の中に、双子岳スキー場のロッジは建っていた。 といっても、建物は数年前訪れた当時から使われておらず、すでに廃屋と化している。入口辺りのガラス窓は割れていて、回りは雑草があちこち伸び…

マテリアル2 19話

19 凝視 郊外にある深い森の中にひっそりと建つ、聖パウロ芸術大学のまだ新しい校舎に、またも降りだした激しい雨が叩きつけられるように当っていた。遠くではごろごろと地響きのような雷が鳴っていて、段々とこちらに近ずいて来ている。 消灯時間はとっく…

マテリアル2 17・18話

17 さらなる逃走…新潟へ 三国街道をかっ飛ばす事一時間、真理の運転するワゴンは燕三条という街 へ入った。通り過ぎた長岡という街も割と大きな街だったが、新幹線駅と共に 後から栄え始めた燕三条の方が賑やかだと、一人新潟が地元の博士が長々 と説明す…

マテリアル2 16話

16 三国街道沿いドライブインで… 国道17号線を進むワゴンは、暗い山道が続く新潟県へと入った。三国街道と呼ばれ、古くは上杉謙信の関東遠征の際に利用された主要な交易道である。 現在は新幹線、上越自動車道などの高速道路の開通以降、主要道路として…

マテリアル2 15話

15 夕方…市街地からの逃走 聖パウロ芸術大学から市街地へ抜ける道は、森の中を走る一本の砂利道だけであり、もしも襲撃者たちが初めから出口に待機していた場合、この逃走劇はそこで終わりを告げる。幸い砂利道の終点に怪しげな者たちはおらず街へ抜けるの…

マテリアル2 14話

14 脱出 真っ暗な闇の中を激しい閃光と轟音が鳴り響き、悲鳴と怒声が交錯する地下通路をライトの明かりだけで逃げまどう真理たちであったが、とうとう袋小路へと追いつめられた。 最後のT字路の先は行き止まりになっており、万事休すに見えた。 「…ここま…

マテリアル2 13話

13 雨音の中で… アーチ型の坑道を進む真理たちだったが、ほどなくして道は行き止まりとなっていた。足元には線路の木切れや、コンクリートの破片が散らかっていて、ごみ溜めのようになっている…。 「…おかしいなぁ、この地図だとこの先にも通路が続いてる…

マテリアル2 12話

12 地下廃坑道へ… 朝食を終えるとさっそく、ぼうずの博士に心あたりがあるという場所へと向かう。それは大学の外にある深い森の入口であった。博士と共に侵入口を捜すためにやって来たのは博士とその秘書、警部補にそして一人の警官が同行した。 真理が侵…

マテリアル2 11話

11 運命の一日…そして朝食会 朝の七時を過ぎた頃、ほとんどの寮生たちが一旦大学を離れていった。もちろん二・三日の事ではあるが、この芸術大学に入学した者のほとんどが寮生活を送っていたので、三日も大学を離れるという事は異例の出来事である。 さすが…

マテリアル2 10話

10 深夜から朝までの時間… 博士の驚きの推理と、理事長室に逃走中の刑事が見つかったという報告が入ったのはほとんど同じタイミングであった。 報告を受けた警部補は急ぎ、若い刑事が見つかった場所へと向かう。それというのも、見つかった場所がこの大学…

マテリアル2 9話

9 闇の遺産 学内は今だ捜査中であったが、理事長室には警部補を含め五人の人物が集まっていた。ラガーシャツの若い刑事と須永理事、そして博士と呼ばれる男と、その秘書の女性の探偵二人。真理と光は着替えのため、まもなくここへやって来るそうだ。 今はち…

マテリアル2 8話

8 黄金の蛇 救急病院のロビーから少し離れた自動販売機で、暖かい飲み物を買いながら警部補は長椅子に腰を降ろした。販売機のある場所は小部屋のような作りになっており、近くには警部補と探偵の二人しかいなかった。 「…捜査当局の中でも、あの時の事件の…

マテリアル2 7話

7 巡る事件の影 二十二時を過ぎた頃、市街にある救急病院の木々が生い茂る庭の中で、辺りの闇に溶け込むように「博士」と呼ばれたぼうずの男が、二階の窓の明かりを見つめていた。先ほどからなにやら人の出入りが慌ただしくなっている。 昨晩のニュースを聞…

マテリアル2 6話

6 深夜の前の時間… 夕食が終わり寮生たちは自室へと戻って行った頃、警部補は大学の中央広間の隅で電話をかけていた。重症の給仕婦が意識を取り戻したらしいとの連絡が入ったのである。現在は意識も落ち着いているとの事だった。 「…いいか、どんな事でもい…

マテリアル2 5話

5 白い想い その日の夕方、真理は彫刻教材の整理のため自身の美術教室に残っていた。お客である稲本光は理事長室に残してきていたが、なんとなく真理はぐずぐずと作業をしながら時間を潰していた。 ここは真理の城ともいうべき場所で、自身の彫刻作業場所で…

マテリアル2 4話

4 パヴァーヌ しばらくの間、真理は食堂のテーブルの椅子から動く事が出来ずにいた。まるで金縛りか何かにでも遭ったような…不思議な感覚に陥ってしまったのである。 おかげで声をかけられているのも分からずに、真理はぼんやりと中空を眺めていた…。 「…………

マテリアル2 3話

3 回帰 真理にとってのこの数年は、けして幸せとはいえない苦悩の日々だった。奇跡的に回復したとはいえ、その数日間は肉体的な苦痛にさいなまれ、一時は生死の境をさまよったのだ。 回復して以降、仮設に作られたプレハブの大学で一年、友に囲まれて過ごし…

マテリアル2 2話

2 帰ってきた給仕婦 襲われ倒れた二人の女性徒のうち、うつぶせに倒れていた方はほとんど怪我らしい怪我はしていなかった。ただ、突き飛ばされ僅かな間気を失っていただけである。むしろ窓ガラスにもたれかかるようにしている美里の方が、怪我としてはひどか…

マテリアル2 1話

激しい雨が窓ガラスに打ちつけられ、強い風が外の木々を揺らしざわざわと音を立てる。突然夕方から発生した嵐のような天候は、今晩から明日にかけて激しい雨を降らせるようだった。 嵐の中、郊外にある森の真ん中に、ひっそりと佇むように何かの施設があった…