ザ・怪奇ブログ

怪奇小説・絵画・怪奇の世界!

マテリアル 14・15話

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 耳を塞いでも直接頭の中に響いてくるような、激しい騒音のような
ものに襲われながら、博士は壁の不気味な絵や文字を読み取ろうとし
ていた。だが、それを妨げるほどの、激しい敵意のような雑音ないし
は振動のようなものを博士は感じた。


「…早紀君、ほら、いつだったか心霊研究家の館で交霊会に出席した
事があったろ?その時に物が落ちたり、奇妙な音が鳴ったりした事が
あった。あれは研究者の、意志の力が起こしている現象だった。今
起こっているのもそれに似ている気がする…。」

 恐らく古いラテン語であろうその文字を解読するのは、博士でも困
難な事であった。

 その音は次第に小さくなっていったが、明らかに二人の行動を邪魔
するように今も頭痛のような振動を発し続けていた。

「…なんだか分からんが、ここに近ずけさせたくない意思のようなも
のを感じるな。」

 それにしても不気味なのは、その壁一面に彫りこまれた生き物らし
き物体である。いったい何をモチ―フにしたらそんな生き物が描かれ
るのか?という奇怪な代物だった…。

「…早紀君、何に見えるかね?」
「………大蛇?」

 たしかに、蛇らしき生き物には見える。しかし有史以来、こんな蛇が
存在したという記述はどこにもない。

 そしてそれは、ライトの黄色い光に照らされながらも、美しいまで
に白い石で彫り込まれていた。古来より白い蛇には、神が宿るとされ
てきたが、これはとてもそんなことを連想させるものではなかった。
その奇怪な物体の目のような位置に、緑色に美しく光る宝石が埋め込
まれていて、ライトに反射してチカチカと光を放っている。

「さて…この先に進むにしても、何をどうすればいいかさっぱり分か
らんな…。」

 だが、二人で壁の一部にあちこち手を触れているうちに、鈍い音と
ともに中央の一部の壁がゆっくりと開いた。人一人が、やっと通れる
ような小さな入口が…。

「よし、どうやらこれが入口のようだ。行ってみよう。」

 二人は真っ暗な穴の中を、ブルクハルト学園の中心部に向かって
侵入していった。

 

 

 その音が徐々に弱まってきた頃、他の授業の生徒たちも廊下へと
出てきて何事かと騒いでいる。

 それを収めようと、間宮先生も出てきて騒ぐ生徒達をそれぞれの教室
へと戻している。その中には真理の姿も見えていて、彼女は私の方を
驚きの表情でただ見つめていた。

「…今、何の音だったのか調べさせます。あなたたちも何か分かるま
で、そのまま教室で授業を続けてなさい。いいわね?」

 間宮先生は、私たちの教室にも声をかけ、足早く走り去った。
真理はそれを追いかけて行こうとしたが、途中でやめてこちらへとや
ってきた。

「…いったい何の音だったの?」
「さあ…よく分からないけど、まだ少しだけ振動があるわ。」

 私は自分の机の上の、乾燥した絵具の欠片が小さく跳ねているのを見
た。まだ振動のようなものは収まっていなかった。

 


 先ほどの通路とは違い、真っ暗闇の中を小さなペンライトの光だけで
二人は動き回る。中はひんやりとしていて、手に触れる壁は完全に石で
作られたレンガ状になっていた。

「…ここはもう昔の教会の中だな。作りがまるで違う。」

 手探りで歩を進める二人の前に、鉄で出来ている大きな扉が現れる。
どうやらこれが教会の中へと通じる門であるようだ。
博士は静かに扉を内側に開いた。

「…危ない!博士…!」

 扉が開くと同時に、中から黒い影が躍り出てきてライトの光できらり
と光る物を博士に振りおろす。

「ぐわああぁっ!?」

 石で出来た冷たい廊下の上に、博士は前のめりに倒れこむ。
そして黒い人影は、肩の辺りを押さえる博士を引きずりこむと、鉄の
扉を閉めてしまった。

「博士…!!」

 秘書はその扉を開こうと力を入れたが、どうやら中からかんぬきをかけ
られたようだ。扉の向こうから獣に似たような声で何者かが吠えるよう
に暴れている。扉を蹴りつける秘書に、内側から博士が叫ぶ。

「…今すぐ逃げるんだ!敵は一人じゃないかもしれない!君はあの子ら
を守れ!いいか…」

 それきり博士と唸るような声はどんどん遠ざかるように消えていく。
秘書は溢れる涙を拭って、踵を返し暗い闇の中を出口もわからず走った。

 

 

 

 それから一時間ほど経ち、間宮先生が戻ってきた。後ろには数人の
作業服を着た男の人たちがいるが、何かの技師だろうか?

「とりあえず危険のようなものは無いそうだから、あなたたちも食堂に
行ってもいいわ。そろそろ時間でしょ?」

 間宮先生が胸のポケットから眼鏡を取り出しかけると、時計の時間を
確認した。

「…いったい何があったんですか?」
「ボイラーの故障で大きな音が出たんじゃないかって…これから本格的
に配管なんかを調べてもらうの。でも一応何が起きてるか分からないか
ら、なるべく皆一緒に行動するのよ?」

 頷くと私たちは道具をかたずけて、教室を出ていく。お昼の時間は
いつもよりも少し過ぎている。教室を離れる時、間宮先生が一人ごと
のように呟いた。

「こんなに問題が次々に起こるようじゃ、二・三日学園を休校して生徒
達を家に帰さなくちゃならないかも…。須永先生早く戻られないかしら
…。」


 食堂へやって来ると、すでに大勢の生徒がやってきていて、口々に先
ほどの奇妙な音について話していた。もちろん、そんなことはまるで我
関せずで食事を摂る生徒も多くいたが…。

「真理さん、大丈夫…?」

 いつもの席に腰を降ろし、何やらそわそわと不安に怯えているような
真理を見て、私は声をかけた。昨夜からたて続けで事件事故が起きてい
るので無理もないが、私がこれまで数週間、見て感じてきた真理とは
かけ離れたようにおどおどと自信の無い顔をしている…。

 その真理はきょろきょろと辺りを見回して、不安げに言った。

「…おかしいわ…ここに来てない人が何人かいるわ…。」
「トイレか自分の部屋に戻ったんじゃないかしら?」

 私は真理にそう言ってから食堂の中を見回した。

 そういえば…あのやかましラガーマン・Tシャツの大男がいない…
食事の時間といえば、誰よりも先にやってくるはずの人がー。
それと彼と共にいつも食事をしていた二人の男子生徒の姿も、今は見え
なかった。どこに行ったのか?


 と、食堂におなじみの大きな腹をした警部補がやってくると、まっ先
に視線をこちらへと向けると足早にやって来る。

「…手短に聞くが、君のその足は…ほんとに転んだだけなんですな?」
「……はい。」

 警部補はあからさまに困った顔をして上を向いた。

「ではもう一つ。君らの中で、理事長の養子であるという人物を知って
いる者はおるかね?数週間前、行方不明になった女生徒以外で…な。」

 その質問に、私達は首を横に振った。またも警部補は天井を仰ぐ。

「最後の質問だ。この学園の中でおかしな二人組みを見たかね?」
「…いいえ。」

 私はその質問にも本当の事を答えなかった。
博士に何を聞かれても「知らない」と答えるように言われているのだ。
それが私たちの安全のためだと、博士は言っていた。

 警部補は深いため息を吐いて、私の目を疲れた表情で眺めた。
私にはこの警部補が、私たちについて何かを知っているのだという事が
よく分かった。

 すると警部補の携帯のベルが鳴った。彼は私達から少し離れた場所で
携帯をとると、こちらを見つめながら相手の言葉に耳を傾けていた。
なんだか嫌な感じがする…。

「…わかった、すぐに行く。」

 彼は携帯を切ると、私の目をじろりと見てから急ぎ足で食堂を出てい
った。


 私たちはしばらくその場で黙っていたが、食堂に間宮先生がやって来
て大きな声で言った。

「…ちょっと静かに!よく聞いて!」

 そのあまりにも大きな声に、食堂の生徒たちは一瞬で口を閉じ間宮先生
の方に顔を向けた。私や真理も何事かとそちらに視線を向ける。

「みなさんもご存じの通り、明日から大規模な配管工事を行うという事
なので、色々な問題もあり今晩から三日間ほど休園になります。これか
ら、それぞれ支度をして家に戻ってもらいますが、どうしても家に戻れ
ないという人は、私に申し出て下さい。いいですか?」

 食堂はざわざわとなったが、生徒達は各々自分の部屋に戻って帰り
支度をする者と、居残りを申し込みする者とに分かれた。もちろん、
居残りする者はほんの僅かでもいたのだが、多くの生徒達は、久しぶり
に家に帰れるとあって喜んでいる。

「…私はここに残る。」

 奈々子は私にそう言って部屋に戻っていった。

「私も…家には戻れないわ。両親半年ほど海外なの…。」

 私の両親は、この学園に入学が決まった時から仕事で台湾にいるのだ。
家に戻ってもどのみち誰もいないのである。たしか奈々子も同じよう
な家庭状況であったはず。


 なんだか大変な事になってきたが、私は事態が徐々に動き始めたので
はないか?と感じた。もちろん奈々子もそう感じているから残ると言っ
たのだろう。

 それにしても…あの博士と秘書の二人はどうしたのだろうか?休校に
なった事と彼らの事は、何か関係があるのか?

 それに、あの地震のような音や振動は、本当にボイラーの故障なので
あろうか?

 全てはあの二人が戻れば解る事だと、その時の私は思っていたのだ。


 だが、彼らはその日の夜になっても私たちの前に姿を見せる事はなか
ったのである。

 

 

 

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 夕焼けに染まる教室で、私と奈々子は課題の絵の作業をしていた。
ほとんどの生徒が学園を出て家に戻る中、私と奈々子は残るという
選択をした。生徒たちがいなくなった学園は、すっかり静まり返って
いて昨日の騒ぎが嘘のような寂しさである。
学園に残った先生らも僅かで、その多くはボイラーの配管検査のため
に技師とともにあちこち点検の最中であった。

 ここに残る事に決めて、私たちは普段通りに振る舞うようにした。
色々な事が重なり頭がいっぱいのはずであるが、私はこの時だけは集中
して絵を描くことが出来たのだ。

 しばらくは沈黙の中で絵を描く作業に集中していた奈々子であるが、
とうとう我慢が出来なくなったのか、彼女は私に話かけてきた。

「あのさ…今って学園の中、人少ないんだよね?」
「そうだけど…どうしたの?」

 奈々子は少し考えてから立ち上がると、私の席にやってくる。

「…今なら理事長の部屋に入れないかな?何か行方不明の養子の子に
ついて分かるかもしれないし…ね?」
「でも…警察だってもう調べた後なんでしょ?私たちが見たって何も
分からないんじゃ…」

 私は昨夜の、理事長室から出てきた時の、警部補のお手上げという表情
を思い出す。めぼしいものは何一つ見つかってはいないのだろう。

「私たちだからこそ、分かる事もあるかも知れないじゃない?警察はさ、
理事長が魔女だなんて、夢にも思ってないでしょう?どう…これ?」

 …たしかに、私たちだから分かる事もあるかも知れない…。

「…行ってみようか。」

 私と奈々子は静かに教室を抜けると、ほとんど上がったことのない
三階の理事長室に向かって階段を登っていった。

 


  街から少し離れた診療所の待合室で警部補は、血のように真っ赤な
沈みゆく夕陽をいらつきながら見つめていた。
それにしても、何故夕方の診療所というのはこんなに混んでいるのだ
ろう?と、忌々しくも警部補は思った。

 午後の診療が終わると、警部補はさっそく医師に確認作業を行った。

「…では、たしかにその二人組みの女の子はここに治療に来たんです
な?」

 警部補は、机に座りながらカルテを見つめる眼鏡の医師に尋ねる。
医師は、いらつく警部補を気にした様子もなくのんびりとした口調で
言った。

「ええ、軽い捻挫ですなぁ。午後の診療時間ぎりぎりでしたな。よく
覚えてますよ。ああ、そういえばもう一人いたな…」
「…もう一人?誰ですそれは?」

 眼鏡の医師は立ち上がると、コーヒーを取り机に戻りながら話す。
警部補は腕の時計をちらりと見て、いらつく気持ちをなんとか押さえ
て医師の言葉を待った。

「近所で開業してる探偵事務所の秘書の子ですよ。あれは変わった娘
ですな。この辺りじゃ変わり者で知られていてね、そこの探偵がまた
変わった男で…猫の行方不明事件から近所のドブさらいまでやってま
してな?ほとんど金にならん仕事ばかりだそうです。この前なんか…」
「…待て待て、探偵だと?それはたしかに二人組みなんですな?その
連中の住んでる場所は分かるのか?」

 警部補は医者の言葉を遮るように、身を乗り出して聞いた。
捜査が何の進展もない状況で、ここにきて現れた疑わしげな人物たち。

 ”…たしかに、疑わしげな二人の人物があの学園の周りをうろうろ
していたのは確かで、それがあの二人の女性徒と繋がったのだ。しか
し…探偵なんかを学園に呼び寄せて、何を調べようとしているのか?
そこに行けば、彼女らが何かを知っている手掛かりが掴めるかもしれ
ない…!”

 警部補は急ぎ足で診療所を出ると、外に止めておいた車を走らせ、
山の上にある小さな探偵事務所を目指した。

 

 


 三階の一番奥にある理事長室は、ほとんど事件前の状態そのものと
いえた。それだけ事件性に乏しい出来事だったのだろう。
本当に理事長は、ただの心臓の発作で亡くなったのかもしれない…。
ドアに鍵もかけられていないその部屋は、私たちが期待していたもの
なども一切無かった。

「…蝋燭とか骸骨のシンボルとか飾ってあるかと思ったけど…。」

 ごく普通の部屋の飾りを見ながら奈々子は言った。部屋には写真一つ
も飾られてはいない。まるで生活感が感じられない部屋である。

「こう何にもない部屋じゃ、時間の無駄みたいね。戻ろうか?」

 奈々子が部屋を出ようとした時、私は入口の壁の一部分だけが奇妙
に変色している事に気がついた。四角く何かの跡のようなものが壁に
見える。何か掛けていた跡であろうか?

「…賞状とかの額かなんかの跡じゃない?」

 私と奈々子は、何の収穫もなく理事長の部屋を後にした。

 

 

 

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 二階の教室に戻ると、入口でバッタリと須永先生に出くわした。
突然人に出会った私たちはびっくりしたが、それは先生も同じである。

「あら、あなたたち家に戻らなかったの?」
「はい、私たち家に戻っても誰もいないんです。それにここにいれば
絵を描いていられるし…。」

 先生は両手いっぱいの荷物を持っていたが、そのほとんどは自分の
描いていた絵やその道具であった。

「そうねえ、ああ、それはそうとあなたたち、ちょっと手伝ってくれ
ないかしら?」

 話を聞くと、須永先生のアトリエから絵や道具を倉庫の方に運ぶ手
伝いをしてほしいとの事だった。

「ずっとかたずけようと思ってたのよ。こういう状況になったもんだ
からこの機会にかたずけちゃおうかって…悪いわねえ。」
「いえ、どうせ暇でしたから。倉庫ってどこですか?」


 倉庫は三階にあった。
これだけの大きな学園の倉庫だけあって、内部はまるで迷路のように
広い。そして窓が一つもない倉庫の中は、電気をつけた状態ながらも
不気味なほど薄暗い場所であった。

 それはただ広いだけじゃなく、まるで宝物庫のように素晴らしい物
がたくさん置かれていたのだ。芸術大学の名に恥じることのない様々な
作品や、過去の装飾品。古い家具や貴重な本の数々が所狭しと無造作
に並べられていた。

 奈々子はひと際大きな陳列棚の中を興味深そうに覗きこんでいる。

「…ほら、これ凄いよ。昔の海賊が使うナイフみたい。」

 見ると、棚の中に柄の部分に見事な装飾が施されたぴかぴかのナイ
フがいくつも並んでいた。中には見事に湾曲した大きな刃のナイフも
ある。

 私はその陳列棚を見ているうちに、ある事に気がついた。
きちんと並べてあるナイフだが、いくつか開きがあるという事に…。

「…誰か持ち逃げしたんじゃない?」

 奈々子が悪戯な笑みを浮かべて言った。

「珍しい物がたくさんあるでしょう?大体は卒業した生徒や教師の作
品なんかが多いんだけど…あ、私のは一番奥の方に持ってってもらお
うかしら。」

 須永先生の絵を運ぶ途中、倉庫の中央付近にひと際大きな彫像が
置いてあった。それはとても白く綺麗な色をした人間の彫刻だった。
見事なまでに美しい男女の像…そして装飾までもが細やかに表現され
ている。

「…奈々子さん!見てこれ…!」

 私は隣の奈々子に囁くように言った。
その美しい彫刻の装飾の中に、例の奇妙な場所に描かれていた”蛇”
の姿が掘りこまれていたのだ。

「凄いでしょう?これ、まだ理事長が若い頃の作品なの。たしか、娘
さんが病気で亡くなって、日本に来てから彫刻は辞めたって聞いたけ
ど…海外でとても有名な彫刻家でもあったのよ。」

 …これが理事長の作品なのだとしたら、彼女は結社と何らかの繋がり
があるに違いないという推測は成り立つ…。
黒ずくめの博士が言っていたのだが、あの奇妙な蛇は、おそらく結社
のシンボル・マークであろう、と。

 そう考えると、やはり理事長は魔女だったのであろうか?


 私は須永先生の絵を倉庫の奥の方へと持っていき、同じく絵画が並
べてある場所にそれを置いた。

 その中には、先生が描いたという理事長の肖像画が紛れてあった。
例のへーゼルグリーンの両目が、妙に力強い眼光を放っている肖像画
である。

 

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 実際に理事長に会って話をしたのは、ほんの二・三回ほどだったが、
私には気さくで、とても魅力的な人物に見えた。

 それが昨夜、あっという間に亡くなってしまうとは……。

「…この絵を描いた時は理事長、喜んでくれて部屋に飾ってくれて
いたの。でも…ある時誰が運んだのか知らないけど、私のアトリエに
紛れこむように戻っていたのよ。」

 須永先生もその絵を悲しげな表情で見つめながら、私に言った。

「さ、もう行きましょう。」

 私たちは薄暗い倉庫を出ると、階段を下りて寮へと戻った。
陽はすっかり落ちて、辺りは夜の闇がすっぽりとブルクハルト学園を
包み込んでいる…。

 それは私たちにとって、長い長い悪夢のような一夜の始まりだった。


(続く…)