ザ・怪奇ブログ

怪奇小説・絵画・怪奇の世界!

2020-01-29から1日間の記事一覧

夜の観覧者 34話

34 観覧者の謎 10月8日 運命の夜… 時間ばかりが過ぎてゆき、とうとう運命の惑星直列まであと一時間と迫っている頃、涼子と大男の刑事はモラヴィア館の中をあてもなく動いていた。 今回の事件の鍵を握っているであろう、青山という男を捕まえるためではある…

夜の観覧者 33話

33 消えた201号の男と、最後のコーヒータイム… 10月8日 運命の夜… 二階の201号へとやって来た博士たちは、部屋の入口の鍵が開いている事に少々とまどいながらも、中に向かって声をかけてみた。 しかし暗い部屋の中から返事はなく、博士は後ろの二人…

夜の観覧者 32話

32 母と娘 10月8日 運命の夜… 物心が付いた頃、菫は夏美が描いたものと同じ、郊外にある丘の上の小さな一軒家に母親と二人で住んでいた。 家の回りには花壇が沢山あったが、菫の記憶ではいつも花が咲いていたためしは無い。手入れがされていなかったという…

夜の観覧者 31話

31 形を取り始めた怪異 10月8日 運命の夜… 秘書の呼び声で向かった夏美の部屋も、博士の部屋と同様に外への窓は開かず、押しても引いてもびくともしなかった。 薄いガラス張りの小さな窓にも関わらず、力任せに拳で叩いても割れる事もなく、とうとう博士は…

夜の観覧者 30話

30 夜の前の一時間… 10月8日 運命の夜… 昼間同じリムジンに乗って来た時とは違い、夏美たちの中で無駄話をする者は一人もいなかった。全員無事に戻ってきたとはいえ、あれだけの惨劇を目の当たりにしてきたのである、無駄口をきけないのもしかたない。 下…

夜の観覧者 29話

29 微かな風と… 10月8日 夕方までの時間… 夕暮れが近ずく曇り空を背景に、薄暗いフロアのなか二人の双眼はライトのように強烈な輝きを放っていた。へーゼルグリーンに輝く光に対して、秘書の両目はオレンジ色に輝いている。 その瞳は、猫や蛇といった夜行…

夜の観覧者 28話

28 開戦 10月8日 夕方までの時間… それはいつの時代かも知れぬ、遠い昔から存在していた一本の木だった。人類が歴史に登場し、集団を形成し始めた頃からそれは人々の信仰の対象へと変わっていく。 古代ケルト人の中でも、特異な宗教観を持った人々は生贄を…

夜の観覧者 27話

27 王家の遺産 10月8日 夕方までの時間… 一時間近くも遅れて広間に現れたこの巨大ビルのオーナー、この国の財界でもトップクラスの規模を持つ下柳財閥の会長、下柳清五郎はとても七十を過ぎたとは思えない雰囲気を漂わせていた。 車椅子に乗ってはいるが背…

夜の観覧者 26話

26 空の上の伏魔殿 10月8日 夕方までの時間… 全長五メートルはあろうかという黒いリムジンの中は、さながら高級クラブのようだった。L字型の長いシートに、バーのカウンターの様な物が接置されており、驚くほど豪華なグラスやシャンパンが並べられている…

夜の観覧者 25話

25 悪魔からの招待 10月8日 正午… 鏡の裏は狭い通路になっていて、そこからカビ臭い湿った風が寝室に吹き込んできていた。 割れた鏡の破片を一つ手に取ると、それを覗き込むようにしながら光は寝室に集まった者たちに説明を始める。 「見て、この鏡マジッ…

夜の観覧者 24話

24 見えざる気配の謎… 10月8日 正午までの時間… 博士の部屋では、軽い朝食を終えた涼子らが館の中を見学に行った光が戻るのを待っていた。小さなキッチンで夏美は、菫と二人並んで洗いものをかたずけている。 今だ停電は復旧してはおらず、何が起きるか予…

夜の観覧者 23話

23 朝の一幕 10月8日 正午までの時間… 日が昇った午前七時過ぎ、博士と秘書の二人は喫茶店ラ・テーヌへと向かったが、入口の看板は「準備中」となっていた。 中の様子を窓ガラスから覗き込むと、カウンターの椅子に座る千枝子の姿が見える。たしか年齢は十…

夜の観覧者 22話

22 運命の輪 10月8日 朝の時間… にわかには信じられない事を告げた博士は、皆の疑問に答える前に秘書が入れたインスタントコーヒーを嬉しそうに飲み始めた。 夏美と菫が母子であるという仰天の仮説は、当然みなに疑問符を突き付けられてしまったが、博士は…

夜の観覧者 21話

21 隠された過去 10月8日 土曜早朝までの時間… 大停電の暗闇の街の中にあって、これまでとは逆にぼんやりと明るさを放っているモラヴィア館へと夏美たちが戻って来たのは二時を過ぎたところであった。 明かりのほとんどをガスランプや油を使った古めかしい…

夜の観覧者 20話

その日深夜に見舞った大停電は、東京の板橋区を中心に円形状に広がりつつあった。 大都会東京の美しい夜景の中、一部の地域だけが円形状に穴が開いてしまったかのように黒々としている。それはブラックホールに街ごと飲みこまれているかのように見えた…。 通…

夜の観覧者 18・19話

18 黒と白の激突 10月7日 金曜夜… 暗闇の中、ヘーゼルグリーンの瞳は燃えるように輝きを増していた。瞳はさながら蛇のようなスリット状に変化していて、それは光が自身の身体にオルゴンというエネルギーを増幅させる事によって起きる、いわば生理現象のよ…

夜の観覧者 17話

17 ゴールデンタイムの悪夢 10月7日 金曜夜… 日も暮れ始めた頃、モラヴィア館の向いにある教会の鐘の音が午後五時を示して鳴り響いていた。部屋には大きな窓が一つだけあり、そこから僅かに残った夕陽が射しこんでいる。もう数分も経てば、それも消えて夜…

夜の観覧者 16話

16 不吉な星 10月7日 金曜 夕方… 須永理事長から渡された手紙を持ってモラヴィア館へと秘書が戻ると、一同はそれぞれの情報を交換した。そのいずれも奇怪なものばかりだったが、中でも博士が気になったのは須永理事長の手紙に書かれた情報だった。 例の会…

夜の観覧者 15話

15 血文字 10月7日 金曜 正午… 菫がもう一度眠りにつくと、夏美は皆が戻るまで少しモラヴィア館の中を見て回る事にした。考えてみれば、ここに来てから館の中をじっくりと回った事もないなと思い、菫の部屋を後にする。 三階にある305号室を出ると、3…

夜の観覧者 14話

14 隠滅… 10月7日 金曜 午前… 目的の場所へと車を走らせていた涼子は、つい半年前に訪れた雑居ビルの隣にある風俗店の派手な看板を見つけ、車を静かに止めた。 時間は七時を過ぎたところだったが、朝もやの中動く人影はまだない。車の中からビルの方を観察…

夜の観覧者 13話

13 金曜、朝の出来事… 10月7日 金曜 朝… 深夜の三時…大都会の中にあって、さすがに人の気配も少ない時間。交差点の信号機の明かりや自動販売機などの明かりくらいしかない田舎とは違い、ビルの明かりや高層マンションなどがあるおかげで暗闇とまではいかな…

夜の観覧者 12話

12 二人の魔女 10月7日 金曜 深夜から朝… 東京から少しだけ離れた地方都市の、高層ビルの二十二階にそのテナントはあった。その階の半分くらいを占める広いスペースに、様々なアンティーク品が並べられている。 一見すると高級家具や小物を扱う普通の展示…

夜の観覧者 11話

11 暗闇の魔女 10月7日 金曜 早朝まで… 懐から取り出した小さな古めかしい本を開きながら、博士は今だに疑心暗鬼な夏美たちに説明を始めた。時刻はすでに日をまたいでいて、一日の疲れもあり思考能力は落ちてきていたが、博士は何かを急ぐように熱を込めて…

夜の観覧者 10話

10 合わせ鏡に残された文字 10月6日 木曜 深夜… 菫が目を覚ました時、夏美はべッドの脇の椅子に座りながらうとうととしていた。昨夜はかなり遅くまで飲んでいたので、ついつい眠くなるのもしかたがない。 目だけを動かし、自分に一体何が起きたのか?を把…

夜の観覧者 9話

9 演奏会 10月6日 木曜 夜… その日行われた新たな入居者への歓迎会は、なんとも和やかなうちに進んでいた。もっとも、歓迎会は夏美も含めて今日新たに入居した二人のためでもあり、予定前よりも人数が増えて賑やかなものになった。 応接間と呼ばれた部屋は…

夜の観覧者 8話

8 囁き 10月6日 木曜 夕方… スーパーを出た夏美と菫はモラヴィア館へと戻ってきた。女刑事から話を聞くのは後でも構わないと聞いて、菫は一度教会へと戻るそうで、夕方まで暇を持て余している夏美は彼女と一緒にクリステル教会へと向かった。 「ねえ、今晩…

夜の観覧者 7話

7 迫る犯人像… 10月6日 木曜 正午… 夏美が目を覚ました時、外はすでに太陽が登っていて時計の針は十時を指していた。完全な二日酔い状態で、ソファーからなかなか起きられずにいた。 広い部屋を見回すと、菫の姿がなかった。昨夜はひどく飲んでしまい、最後…

夜の観覧者 6話

6 夜の影から 10月5日 水曜 深夜… 部屋の掃除も終えて、小さなテーブルに菫と向かい合ってお酒を飲む夏美は、すっかり酔いが回っていた。もちろん、相手の菫も。 二人とも今晩はお酒を飲んで色々な事を忘れてしまいたいという気分だったので、気がつけば買…

夜の観覧者 5話

5 尾行…そして夜の前 10月5日 水曜 夕方… 夕暮れが近ずく頃、まだ若い刑事の村山涼子は、モラヴィア館近くの大きな本屋で怪しい二人連れを尾行していた。時刻は五時を回ったところである。 店内は広く、帰宅時間とあって人もたくさんいたが、例の二人組みは…

夜の観覧者 4話

4 接触 10月5日 水曜 正午… モラヴィア館を出て交差点を曲がった先に、夏美はスーパーマーケットを見つけた。時刻は正午を少し回ったところで、朝から降り続いた雨は止み、僅かに晴れ間も覗いている。 もちろん掃除用具を買うためであるが、すでに管理人か…